「唐揚げブームは終わったか?」

唐揚げ、皆様はお好きですか?

新型コロナの影響で在宅時間が増加した事に加え、油の廃棄など調理の面倒さから家庭での調理よりもテイクアウトの楽さやタイパ(時短)効果に注目が

集まった昨今でした。

ちょっと振り返ってみますと・・

富士経済研究所の調査によると、テイクアウト専門店やイートインを中心としたチェーンでの需要の獲得が進みから揚げ店の2020年前年比は23.1%増の1,050億円となりました。

出典:富士経済研究所

https://www.fuji-keizai.co.jp/market/detail.html?cid=21075&view_type=2

すごい増加率ですね。

から揚げ店の伸長

2020年に大ブームとなった「から揚げ取扱店」を運営する企業は、2021年9月末で235社になるそうです。コロナ前の2019年9月末から45社(23.6%増)

増加とのこと。また、「からあげ屋」がブームになる前の2017年3月末の109社からは、2.1倍と大幅に増えているそうです。

 大手チェーンの居酒屋や飲食店はコロナ禍で客足が減り、閉店が加速しています。その一方、生活様式の変化に加え、テイクアウトやデリバリーなど新たな業態との相性が良い「からあげ屋さん」は、年々市場を広げています。

 街の「からあげ屋さん」は、比較的少ない人手と狭いスペースでも出店が可能で、初期投資も軽く抑えられます。よって、他業種からの業態転換、事業多角化の一環として新規参入するケースも目立ちました。

東京商工リサーチ

https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20220203_02.html

「から揚げ店」ブームの要因

ブームの要因は大きく分けて2点と分析しました。

  • 設備費用(厨房設備への初期投資)が安い

特に必要な設備は冷蔵庫と鶏肉を揚げるフライヤーがメインとなります。

店舗敷地もテイクアウト専門店としての運営なら、10坪程度の狭い店舗でも運営できます。

そのため、他の飲食店と比較して初期費用と家賃がかなり安く抑えられます。フライヤーなど必要な厨房機器も少なく、さらにテイクアウト店なら飲食のための席も不要で店舗スペースの広さもあまり必要としないので、同じ立地でも他の飲食店と比べれば物件を安く借りれるなど、とにかく開業に至るまでの金銭的なハードルが低いことが要因として想定されます。

  • 調理オペレーションが単一で簡単

から揚げ専門店の調理は至ってシンプルです。概略として表現しますと、カットして、タレに漬け込んで、ころもをつけて、油で揚げて、包装して提供する作業工程となります。

社員が店頭に常にいる必要は少なく、アルバイト・パートスタッフで簡単に運営できるのが特徴であり、店舗展開スピードを早められた要因と思われます。

安全面に関しても、高温の油でしっかりと揚げているので、生鮮食品を扱う場合に比べて食中毒のリスクがかなり低くなります。

から揚げ店の閉店が増加

そんなから揚げ店ですが、閉店が増加しています。

閉店ラッシュの1番の理由として考えられるのは、店舗数の急激な拡大による過供給です。

上記グラフの「から揚げ屋さん」の運営企業数の推移をみてもわかるように、4年間で2倍以上になっています。

『から揚げの天才』(ワタミが運営)、『からやま』(『かつや』のアークランドサービスホールディングスが運営)や『から良し』(『ガスト』のすかいらーくグループが運営)等が同時に展開を始めたため、全国に「から揚げ店」が大量出店しました。

他店との差別化ができず、目新しさもなく売上が伸びないことで、から揚げ業界全体として供給過多となり、想定した売上を獲得できず、赤字に転落していったと予想されます。

さらに、ロシア・ウクライナ戦争をきっかけに食材価格・電気料金等の高騰が起こっています。

特に①食用油の値上がり、②鶏肉の値上がり、③光熱費の値上がりが最近では顕著です。(2023年3月現在)

出典:NHK首都圏ナビ

https://www.nhk.or.jp/shutoken/newsup/20230301e.html

鶏肉の輸入価格の高騰

財務省が2月24日に公表した貿易統計によると1月の輸入鶏肉(解体品)の価格は前年同月より17.0%上昇し、鶏肉調整品は前年同月より16.8%上昇しました。国別ではブラジル産の価格が315円/kg(前月比56円安)、タイ産が373円/kg(同49円安)となっています(国別平均価格)。前月比では大幅に価格が下がったが、前年比では高値が続いている状況です。(2023年現在値)

出典:全農JACCネット

https://jaccnet.zennoh.or.jp/jyousei/chicken/

電力市場の価格上昇  

電力も2020年から推移をたどると、上下変動はあるものの、2022年10月にかけて上昇傾向にあることが見て取れます。

出典:新電力ネット(一般社団法人エネルギー情報センター)

https://pps-net.org/unit

安くて美味しいというのが『から揚げ店』の良いところですから、販売価格の値上げもそう簡単にはできないのが現状です。

大手から揚げチェーンの動向

『ワタミ』や『すかいらーくグループ』等多くの大企業が積極的にから揚げ専門店を展開してきましたが、変化が見られるようになっています。

出店ブームから2年以上が経過し、現在では各地で “から揚げ専門店の閉店” が頻繁にみられるようになっています。

業界大手の動向としては下記のIR情報が発表されています。ここから厳しい傾向にあることが読み取れます。

出典:アークランドサービスホールディングス株式会社 IR情報(2023年3月現在)

https://ssl4.eir-parts.net/doc/3085/ir_material1/200745/00.pdf

直営の売上前年比は90.7%と厳しいが、から揚げ専門店としては健闘しているようです。

店舗数は微増となっていますが退店も存在しています。

株式会社すかいらーくホールディングス 

「から好し」企業情報

出典:https://ssl4.eir-parts.net/doc/3197/tdnet/2239854/00.pdf

こちらも同様に厳しい現状が読み取れます。

特に①店舗数は微減、②原材料費の高騰、③イートイン売上の増加に伴いテイクアウト売上は減少、といったことが読めます。

コロナ時に売上貢献したテイクアウト需要の減少とイートイン需要の復活が特徴的です。

中食市場全体の動向 テイクアウトに象徴される中食市場全体の動向ですが

出典:業界動向サーチ  https://gyokai-search.com/3-naka.html

総じて2021年から2023年にかけて増加傾向と読めます。

コロナ影響による外出自粛や営業時間の短縮などがありましたが、直近では回復傾向にあります。一方で、2021年後半から原材料費の高騰が目立つようになり、外食、スーパーやコンビニ、惣菜店、ネットオーダー系のデリバリー(出前館やウーバーイーツなど)の競争も激しさを増しています。

中食市場全体としては回復傾向にありますが、市場内での競争は激化しており、その中での淘汰が進んでいると読めます。その影響もあって総じて「から揚げ専門店」は厳しい状態であり、次の打ち手が要求されているのが現状のようです。

いかがでしょうか。今後もから揚げ市場の動向に注目したいですね!

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