アフターコロナのファミリーレストランの在り方について

ちょっと前、自宅近くの「ジョナサン」が一か月近くお休みして、同系列の「むさしの森珈琲」へ業態転換を図るということがありました。「ファミリーレストランの人気に陰りが出て、カフェへの業態転換がすすむのか?」と考え、背景を調べましたので、その結果を報告させて頂きます。

(ジョナサン閉店直前の店舗外観:筆者撮影)

本題に入る前に、簡単にブランドの復習しておきたいと思います。「ジョナサン」は、言わずと知れた「すかいらーくグループ」を代表する、ファミリーレストランです。ちなみに、「すかいらーくグループ」には、二系統のファミリーレストランがあります。高級志向の「ジョナサン」と、低価格志向の「ガスト」ですね。

もう一つ、「むさしの森珈琲」は、「すかいらーくグループ」が運営する、カフェです。関東近郊を中心に、全国に82店舗が展開しています(2024年10月現在)。くつろぎと癒しの空間、そして、「ふわとろパンケーキ」が売りのようです。
そして、経営は、これまでのところ順調なようです。

■「むさしの森珈琲」が「1人時間需要」で成功したワケ
https://toyokeizai.net/articles/-/461841

では、本題に入りましょう。
実際、周辺の店舗立地や「すかいらーくグループ」の経営戦略等を調べてみた結果、下記の二点が業態転換の要因として見えてきました。

『ミクロの視点:仙川駅近辺のファミリーレストランとの競争とグループ内カニバリゼーション』
私の住んでいる「仙川駅」付近には、多くのファミリーレストランの競合店があります。競合他社としては、駅前の「ロイヤルホスト」、「サイゼリア」、「ラパウザ」以外に、ちょっと離れて「デニーズ」があります。更に、近隣のホームセンターには「フードコート」があり、そこには「リンガーハット」や「モスバーガー」、「はなまるうどん」等が入店しており、これも、ある意味ファミリーレストランの競合店と言えます。

(Google Mapより筆者作成、青線は旧ジョナサン店舗から約2kmの同心円)

加えて、「ジョナサン」に併設した「しゃぶ葉」、数百メートル離れたところに「バーミアン」、駅の反対側ではありますが「ガスト」、更に隣駅にも「ガスト」と「バーミヤン」、系列店が5店舗も存在します。

仙川駅は、駅前を歩いていても家族連れが目立ち、また、一日の平均乗降客数が約7万人と京王線の中でも7番目に多い駅(2023年度実績)で、それなりのマーケット規模だとは思います。しかし、さすがにこれだけ店舗があると、その競争は極めて厳しいことがうかがえます。特に、半径2km以内にグループの系列店が5店舗もある状況では、グループ内での「カニバリゼーションを起こしている」と言っても過言ではないのでしょうか。

一方で、カフェについては、駅前の「スターバックス」、「星野珈琲」、「猿田彦珈琲」、「ドトール珈琲」、地元企業が運営する「KICK BACK CAFE」があり、これも楽とは言えません。

(Google Mapより筆者作成)

しかし、少なくとも系列店の「ガスト」や「バーミアン」との差別化は、「ジョナサン」よりは容易であることは想像に難くありません。競合店との競争回避、更に系列店とのカニバリゼーション回避が、この業態転換の理由の一つであることは間違いないと思われます。

『マクロの視点:多様なニーズへの対応(すかいらーくグループの成長戦略)』
「すかいらーくグループ」の新規出店戦略および、既存店の出店戦略は、下記のようになっております。基本的には、新規店舗については、立地等を考慮しながら、成長の可能性があるところに進出していく、既存店舗については、採算を確認しながら、利益を上げられる店舗に置き換えていく、そんな方向性であると感じました。

■「すかいらーくグループ」新規出店戦略
https://corp.skylark.co.jp/ir/strategy/growth/newstore

■「すかいらーくグループ」既存店成長
https://corp.skylark.co.jp/ir/strategy/growth/existing_store

新型コロナが明けて、来店者が少グループ化している中、増加するおひとり様ニーズに対応して、経営の多角化を進めていることが伺えます。ファミリーレストランから、カフェや「しゃぶ葉」のような一品目集中型レストランに業態を転換させていることは明らかです。

■すかいらーく、ジョナサン・ガストをカフェに続々転換 インフレ克服へ
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00100/020600102

加えて、ファミリーレストランという業態が、時代のニーズに会いにくくなっていることもあるかと考えます。

■ファミレスが「時代遅れ」になってきてる深い理由
https://toyokeizai.net/articles/-/746284

そう考えると、ファミリーレストランの「四人掛けテーブル」は、来店者のニーズに合わなくなりつつあるのかもしれません。

先日、試しに「むさしの森珈琲 仙川店」に行ってみました。平日、お昼時をちょっと過ぎた時間であったにも関わらず満席で、10分ほど待って入店することができました。店内は、ファミリーレストランの時とは、雰囲気もかなり変わっていました。「ジョナサン」の時は、空席も目立ち、活気もいまいちな店舗だったのですが、「むさしの森珈琲 仙川店」になってからは、満席で混雑している割には店内に落ち着きもあり、バランスのいい店舗運営ができていると感じました。

オープンから4か月が経とうとしていますが、人気は継続しているようです。引き続き、ウォッチしていきたいと思います。

Follow me!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です