飲食店の販促ツールは売上に結びついていますか?〜売上に直結する販促ツールの選び方と検証の仕方

販促ツールを使った売上向上

この記事では飲食店における販促ツールの効果的な使い方について考察したいと思います。どんな飲食店さんでも何らかの販促ツールを利用されているかと思いますが、果たして売上に結びついているのかどうか、感覚的にしかわかっていないという状態になっていないでしょうか。

「販促ツールをつかったおかけでなんとなく売上が増えた気がする」ということはあったとしても、事前に売上を●%増やすと前もって設計することや、販促ツール導入により事後的に●%増えた(それ以外の要因を排除し、純粋に販促ツールの効果を測定する意)という定量的な検証を実施されることは実施されていないお店も多いのではないでしょうか。

販促ツールによる事前に売上目標設定と、事後検証がなければ、手間とコストをかけたわりに、売上がおもうように伸びず、かえって利益面が悪化してしまうことにもなりかねません。

本記事では販促ツールを導入する目的を深堀りし、それぞれの販促ツールがどのようなルートで売上に結びつくのかを整理します。また、販促ツールの導入効果を最大化するためには事前・事後にどのようなことをすればよいのか、についても解説したいと思います。

本記事を読んでほしい人

  • 販促ツールって具体的にどのような種類があるのか、どのような効果があるのかがよく知らない
  • 販促ツールを導入しているけど、どれぐらい売上に結びついているのかがわからない

本記事を読んでわかること

  • どんな販促ツールを導入すると、それぞれどのような効果が見込めるのか
  • 販促ツールを導入するにあたってどのような考え方でツールを決めればいいのか

販促ツールを利用する目的

あらためて販促ツールを導入する目的って何だと思いますか。もちろん、来店されるお客様を増やしたり、ひいては売上をアップさせることですよね。しかしながら、その段階で思考を止めてしまうのはかなりもったいない状態です。

売上の分解公式で考えてみましょう。売上=客数×客単価ですが、客数を既存顧客と新規顧客、客単価を注文数と注文1品あたり平均単価とすると、売上=(既存顧客数+新規顧客数)×(注文数×注文1品あたり平均単価)と分解できますね。

以降ではそれぞれの販促ツールが売上要素のどれを狙った施策なのかを考えていきます。

販促ツールにはどのような種類があるか

インターネットやSNSの発展により従来よりも格段に低コストで広範囲に(潜在)顧客にアプローチできることになりました。また、そうしたデジタル技術を活用して新しい販促ツールのアイデアも広がりをみせています。そうした背景もあり、すべての販促ツールを網羅的に把握することは難しく、ここでは代表的な販促ツールとその効果について考察していきます。

チラシ

チラシとは、商品やサービスの販促のために利用される紙媒体のことと一般的には解釈されています。紙を撒くという意味で「散らし」が語源と言われており、街頭や店頭で配布されてていたり、新聞への折り込み、ポストへの投函などの方法で配布されることが多いです。近年ではWEB上で配布する「デジタルチラシ」といった形式も普及してきました。

チラシの強みは、何よりもプロモーションしたいターゲットの居住エリアに絞って効率的に販促できることです。テレビCMや新聞広告といったマス向けの販促よりも相対的に低コストでアプローチしたいターゲットに情報を届けることができます。

では、チラシは売上のどの要素を向上させることを狙った販促ツールなのでしょうか。

答えは「新規客数」の増加です。今はお店を知らない、行ったことのない消費者にお店の存在を認知させ、来店を促すための販促ツールだと考えます。もちろん既存客がチラシをみて再来店したりすることもあるでしょうが、それはあくまで結果論でチラシを使う狙いとはなり得ません(既存客の再来店を狙うなら後述するDMやメルマガなどが有効でしょう)。販促ツールごとに売上向上のなにに狙いを定めるのかを明らかにし、その要素に絞ったプロモーションとする方が売上向上には効果的だと言えるでしょう。

チラシが「新規客数」の増加だとすれば、掲載する情報もあれこれ事細かに載せるより、お店の名前や住所(地図)、看板商品などお店の基本情報を視認性高く掲載することが効果的です。デザインや写真、イラスト等を効果的に活用し、お店の存在を認知してもらうことにチラシの意義があります。また、来店をより動機づけるために、クーポンを組み合わせることもチラシを販促ツールとして活用するうえでは有効です。

DM・メルマガ

DM・メルマガは、商品やサービス、キャンペーンの案内を消費者宛に送付するダイレクトマーケティングと一つです。DMは郵送、メルマガは電子メールと送付方法に違いはありますが、ともにダイレクトマーケティングの手法という意味で共通しています。大多数の不特定多数に訴求できるテレビCMや新聞広告といったマスマーケティングに対し、特定の消費者により直接的に訴求する手法がダイレクトマーケティングです。

では、DM・メルマガは売上のどの要素を向上させることを狙った販促ツールなのでしょうか。

答えは「既存客数」の増加です。DMもメルマガも来店いただいた顧客が会員登録等を行い、収集した送付先情報(住所やメールアドレス)へ送付するわけですから当たり前ですね。では、すでにお店の存在を認知し来店もされている既存客向けに、再来店を促すための施策としてDMやメルマガで何をどう訴求することが有効なのでしょうか。考えられるアイデアは無数にありますが、例として二つの視点で考察してみます。

一つは顧客にとって「NEW」な情報を発信することです。新しいメニューを導入した、店舗をリニューアルした、期間限定でキャンペーンを実施しているなど、過去に来店したときの記憶にはない、何らかの新しい情報を提供することで再来店してみようという動機付けにつながる情報を発信することが既存客数の増加につながるでしょう。

もう一つは、顧客にとって「特別」な情報を提供することです。チラシ等と違い、DMやメルマガは個別の顧客ごとに発信する情報を振り分けたり、狙い撃ちできる媒体であり、ダイレクトマーケティングと呼ばれる理由はこの点にあります。代表的な例は「誕生月クーポン」などがあります。ただし、誕生月クーポンは年1回しかその顧客の再来店を促す効果がありません。より効果的な販促を目指すには、例えば「当人が誕生月でなくても、誕生月の人を同伴すれば割引適用」など、飲食店の「友人や恋人などの誕生日を祝う場であること」、「複数人で利用することが多い場であること」という特徴を活かした販促アイデアを実施してみるもの効果があるかもしれません(少しDM・メルマガの販促から脱線してしまいました)。

SNS

SNS「Social Networking Service(ソーシャルネットワーキングサービス)」を販促ツールとして活用する事例は急速に増えています。SNSを販促ツールとして活用するメリットはサービス事業者のプラットフォームを活用できることで、運用代行等や広告を使わず自前で行う場合はコストがかからないこと、消費者が普段良く使う媒体に情報発信できることで目に止まりやすいことがメリットと考えられます。

では、SNSは売上のどの要素を向上させることを狙った販促ツールなのでしょうか。

答えは「既存客数」の増加、「新規客数」の増加の双方です。「既存客数」の増加は、飲食店のSNS投稿を直接見た消費者が再来店を動機付けられるという意味で他の販促ツールと意味合いは大きく変わりません。SNSで特徴的なのは「新規客数」の増加を狙える点にあります。SNSには自らをフォローしているフォロワーに情報をシェアする機能があることで、口頭伝達よりも拡散性の高い「口コミ」的な効果を期待できると言えるでしょう。そのシェアされた投稿を見た消費者がさらにフォロワーにシェアすることで、いわゆるバスった状態となれば指数関数的な情報の広がりを期待できます。

消費者の目に止まりやすい、シェアされやすい情報とするためには、文字よりもやはり写真や動画といった視認性やインパクトがある形式を用いることが有効です。InstagramやTik Tokといったショートムービーを発信できるプラットフォームが急速に利用者が増えていることからも、短時間で手軽に見れる形式に絞った投稿が有効と言えるでしょう。

クーポン

クーポンは先述したチラシやDM・メルマガ、SNS等のプッシュ型の情報発信が主体の販促ツールと組み合わせることで売上向上が狙える販促ツールです。クーポンは売上向上要素の「既存/新規客数」、「客単価」いずれにも効果がある販促ツールです。

客数増加については、「既存客数」なのか「新規客数」なのかは組み合わせる情報発信媒体によって期待効果は変わってくるでしょう。では、「客単価」についてはどうでしょうか。クーポンは使用することで割引された価格で商品を提供する仕組みですから、無策にクーポンを乱発してしまったら客数は増えるかもしれませんが、客単価は下がってしまいます。したがって、対象商品や使用条件を工夫することでクーポンを発行しつつも客単価を上げるにはどうすればよいのかを考えることが重要です。

例えば「高単価な商品」を対象とする、「〇〇円以上の注文に限る」等の使用条件を付けることで、通常来店よりも客単価が向上するクーポンの使用イメージを事前に設計することが重要となります。客単価はお店によって異なります。これまでの売上情報から、通常来店客とクーポン利用客で客単価にどれぐらい違いがあるのかを確認してみましょう。

POP

POPは「Point of purchase advertising」は、店頭の立て看板や店内の見える場所におすすめの商品やサービスを掲載する販促ツールです。これまで紹介してきた販促ツールが来店するタイミングとは空間的に切り離された自宅や移動中などに情報を受け取る性質のものであったのに対して、POPはお店の前を通りかかった瞬間や、まさに来店された後といった来店や注文の直前に消費者が受け取る情報となるため、即効性が高く消費者の購買動機に最も影響を及ぼし得る販促ツールであると言えます。

そんなPOPの売上向上に貢献する要素は店頭と店内で大きくことなります。店頭POPは主に「新規客数」の増加を狙った販促ツールです。通りかかった時点ではお店に入ることを決めていない消費者に対し、入店を動機づけるためにPOPを活用できます。そのため、POPに掲載する情報はイチオシのメニューや特徴を写真やイラストを織り交ぜながら、できるだけ文字数少なくシンプルに伝えられるPOPが効果的です。加えて、お店の立地やシーズン、時間帯を踏まえ、想定ターゲットに刺さるようなメッセージを加えることも有効です。

一方、店内POPは「客単価」増加を狙った販促ツールです。すでに来店されたお客様に対し、商品単価の高い商品を紹介したり、定番メニューへのおすすめトッピングや食後のもう一品のデザートを紹介するなどがPOPとして効果が高いでしょう。

販促ツールのまとめ

以上のように様々な販促ツールがあり、それぞれ売上向上のために狙うべき要素、販促のポイントをまとめると以下のようになります。

販促ツール売上向上に資する要素販促のポイント
チラシ新規客数の増加お店の存在を認知してもらうために、デザインや写真、イラスト等を効果的に活用し、看板商品などお店の基本情報を視認性高く掲載する
DM・メルマガ既存客数の増加顧客にとって「NEW」な情報、「特別」な情報を掲載する
SNS既存客数の増加/新規客数の増加消費者の目に止まりやすい、シェアされやすい情報とするために、文字よりもやはり写真や動画といった視認性やインパクトがある形式を用いる
クーポン既存客数の増加/新規客数の増加
客単価の向上
対象商品や使用条件を工夫することで、クーポン発行による客単価の低下を抑制する
通常来店よりも客単価が向上するクーポンの使用イメージを事前に設計する
POP新規客数の増加(店頭POP)
客単価の向上(店内POP)
店頭POPに掲載する情報はできるだけ文字数少なくシンプルに、お店の立地やシーズンや時間帯を踏まえ、想定ターゲットに刺さるようなメッセージを加える
店内POPは商品単価の高い商品や、注文点数の増加が期待できる商品を紹介する

販促ツールがどれだけ売上に結びついているのかを知る方法は

これまで見てきたように、販促ツールを導入するうえでは、売上要素のどの要素を向上させたいのかで、最適な販促ツールを決めるとよいでしょう。

しかしながら、それだけでは不十分です。どの売上要素を向上させたいかが分かったとしても、販促ツールの導入により定量的にどれだけ売上向上に貢献したかをトレースできることが必要です。

具体的にどういうことか見ていきましょう。例えば販促ツールとしてクーポンを発行した場合は会計時にクーポンの提示を求め、POSに連携することで事後的にクーポンを利用した顧客数や売上を把握することが可能です。チラシやDMなども「チラシやDMを見た」と会計時に言っていただければ●●円引きなどクーポンと連動させることで解決できます。

では、店頭や店内のPOPの効果を事後的に把握するにはどうすればいいでしょうか。例えば店内POPを刷新し、新商品を大々的にPRしたものを作成したとします。新商品の売上のうち、どの程度の割合の人がPOPを見て注文を決めたと事後的に計測できるでしょうか。新商品を注文したすべての人に「あなたはこのPOPを見て注文を決めましたか?」と確認するのは現実的ではないでしょう。そうした場合には、POPにQRコードを掲載し、リンク先にクーポンを掲載しておくことが手段の一つかもしれません。お客様にとっても少しの手間で割引を受けられることはハッピーですし、お店にとってもQRコードにアクセスした数を把握することで効果測定を行うことが可能になります。

このように少々手間がかかるかもしれませんが、販促ツールと売上の関係を意識し、どのように結びつけるかを設計しておくことで、販促ツールの効果測定がぐんとやりやすくなることがポイントです。以上を踏まえ、販促ツールの効果的な導入ステップを最後にみていきましょう。

どんなステップで販促ツールを利用するべきか

これまで見てきたように、販促ツールの導入効果を最大化するためには、事前設計と事後検証のステップが非常に重要になります。PDCAの観点でそれぞれのポイントをまとめてみます。

P(Plan)

  • 販促ツール導入により向上させたい売上要素の特定
  • 売上要素の改善水準の設定
  • 導入する販促ツールの決定、導入準備

D(Do)

  • 販促ツールの導入

C(Check)

  • 販促ツール導入による売上向上効果の集計
  • 販促ツール導入の評価、検証、分析

A(Action)

  • 評価、検証、分析を踏まえた販促ツールの継続可否判断、改善

おわりに

いかがだったでしょうか。せっかくの販促ツール導入も、なんとなく導入してみてやりっぱなしになっているのは非常にもったいないことです。具体的に売上の何%が販促ツールの効果であったとわかることは、次回に同様の販促ツールを導入する場合のベンチマーク(目安)にもなりますし、モチベーションにもつながります。ぜひ本記事を参考にして飲食店経営の改善に活かしていただけますと幸いです。

当研究会には飲食店経営診断の知見を有するメンバーが多数在籍しており、補助金申請に向けた相談を受けることも可能です。是非お問い合わせページよりご相談をお待ちしております。

当研究会では中小企業診断士資格を持つ様々なメンバーが、飲食店の診断実務ができる人材の育成と組織体制の構築を目的として、会員の経営診断技術の研鑽や、研究会の診断ノウハウの蓄積を行っております。

具体的には、研究会(月1回)の飲食業界に関する調査研究や、オープンセミナーの開催、プロジェクトチームでの飲食店支援実務など、幅広く活動しております。

(詳細は「研究会活動」「提供サービス」のページをご覧下さい)

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