研究会6月定例会報告

記事をご覧いただきありがとうございます。

本日は当研究会の6月の定例会の模様についてご紹介したいと思います。

当研究会「楽しく飲食・飲酒業界を研究する会」は平成29年度に中小企業診断士として活動している複数の有志メンバーによって設立されました。メンバーは研究会名にもある通り、食べ物やお酒好きなメンバー、飲食店の経営支援を行っているメンバーなど、何かしら”飲食”というキーワードに関係を持つメンバーが在籍しています。

そうしたことから、定例会も飲食店へ出向き、フィールドワークを通じて新しい発見、学びを得ようというわけです。

今回は、中野駅前の古民家風居酒屋『魚せん中野店』さんにお伺いしたときの気づき(当日メンバー同士で盛り上がったお店の特徴や改善ポイント)について記事にしてみようと思います。

熟成本鮪と熟成黒毛和牛A5と熟成鹿肉の食べ比べ!魚せん 中野店

お店の外観、内観

立地は中野駅からほど近い路地裏飲み屋エリアにあるお店でありながら、一見お店とは気づかない古民家風の店構えが特徴的です。店舗看板もお店のコンセプトに調和するためか、主張控えめ。唯一「営業中」の赤提灯がシンボルで、筆者もスマホで住所を何度も確認してから恐る恐るお店のドアを開けました。

1階の店内はしっかり居酒屋でした。靴を脱いで2階に上がります。今回は9名と大人数でお邪魔したため、2階の屋根裏のような個室へ。部屋の窓からは中野の夜の路地裏を一望できました。

メニュー表示

メニュー表は、『グランドメニュー』が書いてある冊子と、『本日のおすすめ』が記載された紙の2種類。どれも非常に美味しさそそられるネーミングの料理ばかりでしたが、少し残念だなと思った点が2つありました。

料理名と金額のみが羅列されているレイアウト

定番メニューも多かったですが、普通の居酒屋ではなかなか見慣れないメニューもあり、少し注文を躊躇してしまいました。写真や簡単な料理の説明があるだけで、注文のハードルが下がると思います。また、今回のように大人数で行く場合は、何皿分頼めばいいのか悩むことがあり、おおよその人数の目安があると分かりやすいと思います。

写真付きのメニュー表の例

出所:株式会社モンテローザ

種類が多すぎる「おすすめ」

『本日のおすすめ』が記載された紙には、十数種類のおすすめが所狭しとびっしり書かれており、逆に何が”おすすめ”なんだろうと迷ってしまいました。

筆者は居酒屋に行った際は、ファーストオーダーは店員さんにおすすめを二品ほど聞いて、特に深く考えずそのままオーダーすることが多いです。おすすめは多くても片手で数えられる程度に厳選するほうが、選びやすいのではないでしょうか。

参考:「ジャムの法則」

マーケティング論では比較的有名な法則ですが、人間は選択肢が増えると逆に選択が難しくなる、という法則です。1995年にコロンビア大学に所属するシーナ・アイエンガー教授が発表された法則のようです。「決定回避の法則」とも呼ばれています。

アイエンガー教授はスーパーマーケットでとある実験をしました。お客さんにジャムの試食販売を行うのですが、2つの試食販売コーナーを設け、取り揃えるジャムの種類を「6種類」と「24種類」で差を付けました。そして、それぞれの試食コーナーで足を止めて試食した人・購入した人の割合を計測するという実験です。

その結果は、「24種類」のジャムがあるコーナーの方が立ち寄り試食した人は多かったのですが、実際に試食して購入に至った人の割合は、「6種類」のジャムがあるコーナーの方が圧倒的に高かったのです。

出所:GLOBIS学び放題

英語版となりますが、アイエンガー教授本人が実験の概要を説明している動画がありますので、興味があればご覧になってください。

オーダーシステム

料理やお酒の注文方法は、QRコードを読み取り、スマホで注文するシステムでした。最近個人経営の居酒屋などで増えている印象です。お店側の視点では、「オーダー取りのための店員を配置しておく必要がなくなる」、「注文の聞き間違えなどのミスをなくせる」、「専用のタッチパネル方式と異なり、店舗側での設備導入が不要」などの利点があるオーダーシステムですが、お客の視点で見たときに気になった点が2点ありました。

注文したい商品になかなかアクセスできないもどかしさ

注文メニュートップページのUIが分かりづらく、どのボタンを押せば自分が注文したい商品にアクセスできるのか迷うことが何回かありました。その理由には2つあります。

一つには、「カテゴリ」の切り方です。例えば看板メニューのステーキを注文したいときに「お肉料理」というカテゴリではなく、「おすすめ」のカテゴリに入っているといった具合です。

もう一つは、写真がなくテキスト表示であることです。この点は前述した紙のメニュー表でも言及したことですが、デジタルのオーダーシステムの場合は紙面レイアウトなどの制約がないため、是非導入してほしいと感じた点でした。

注文ごとにくじ引きでポイントが当たるシステム

この仕掛けはQRコードによる注文システムでは初めてだったので紹介したいと思います。商品を選択し、注文ボタンを押すたびにくじ引きの画面に遷移し、当たりが出ると会計時に割引されるシステムのようです。くじ引きは一回きりではなく、注文の度にトライすることができるため、飲み会を盛り上げる要素として面白いなと感じました。

ただし、少し残念だったのが当たる金額の大きさについて。注文のたびにポンポンと当たるのは良かったのですが、当たる金額は「10円」や高くて「100円」ほど。今回は参加メンバーが各々のスマホで自身の飲み物や食事をオーダーしていく形式としていたため、総計で数十回はくじ引きの試行回数を重ねましたが、トータルで獲得した割引額は「数百円」だったと記憶しており、なかなか渋い結果となりました(もちろん、確率の下ブレだった可能性は否定できませんが)。

料理も美味しくトータルで満足しているので、もう少しくじ引きの割引額を上げてくれとは言いませんが、面白いシステムだったため、敢えて提言のようなことを書くとすれば、もう少し「エンタメ要素」に振り切ってみるのが面白いと感じました。

他店事例で言えば、株式会社エー・ピーカンパニーが運営する「塚田農場」の来店ポイントシステムを取り上げてみます。

塚田農場のポイントシステムは『名刺システム』と呼ばれていて、来店回数によって役職がランクアップしていき、昇進時に一品料理などのお祝いがもらえるサービスとなっています。

出所:株式会社エー・ピーホールディングス

くじ引きシステムと来店ポイントシステムを組み合わせることで、以下のようなサービスが考えられるのでは、と妄想してみました。

  • くじ引きの当たりを「割引金額」ではなく、「一品料理」とする(数十円といった少額の割引よりも、よりイメージしやすくお得感のある報酬に)
  • くじ引きの実行回数によって会員ステージをランクアップ(くじのハズレにも意味を持てせる)
  • WEB会員証を発行し、スマホで注文用QRコードを読み取ると会員用ログインページとなり、会員ステージによってくじ引きの当たり確率が上がる/報酬が倍になる(再来店を促すインセンティブを与える)

おわりに

いかがだったでしょうか。

当研究会では原則月に一回フィールドワークや研究会メンバーが持ち寄ったお題に沿ったディスカッションを、楽しみながらも学び合う活動を実施しております。

過去にも販促や店舗運営等に関するより詳細な記事を投稿していますので関心がありましたらぜひご覧いただければと思います。

また、当研究会には飲食店経営診断の知見を有するメンバーが多数在籍しており、補助金申請に向けた相談を受けることも可能です。是非お問い合わせページよりご相談をお待ちしております。

当研究会では中小企業診断士資格を持つ様々なメンバーが、飲食店の診断実務ができる人材の育成と組織体制の構築を目的として、会員の経営診断技術の研鑽や、研究会の診断ノウハウの蓄積を行っております。

具体的には、研究会(月1回)の飲食業界に関する調査研究や、オープンセミナーの開催、プロジェクトチームでの飲食店支援実務など、幅広く活動しております。

(詳細は「研究会活動」「提供サービス」のページをご覧下さい)

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